【息子の漢字学習拒否~漫画との出会い】まき先生コラム5

 

 

もう漢字を勉強したくない!

 

子ども達と家庭内でドリルを中心に漢字練習し、外へ楽しさに結び付けた学習(コラム4)が続けられたのは、小学校低学年の時期まででした。息子が小学校高学年に上がると、タイ現地校の勉強が俄然忙しくなり、それまでのように家庭での日本語学習に時間を割いていられなくなったのです。

時間がない、そして漢字はどんどん複雑化。しかし私は漢字ドリルのノルマから離れず、手を抜きませんでした…するととうとう息子から
「もう漢字を勉強したくない」
と告げられてしまいました。タイにいながらにして、漢字を覚える意味が見い出せないというのでした。

 

複雑化・抽象化していく高学年漢字


 その背景に、高学年の漢字は小学校低学年の漢字のように、体で表せるものなどなくなり、動詞は、求める、伝える等日常使わない言葉になっていました。しかも「ショウ」という音読みだけで漢字がいくつもあります。加えて、半径何cmの「ケイ」、条件の条など抽象的な漢字が多くなり、「労働」や「課題」などの難しい熟語が増えました。機械の「機」や、競争の「競」など画数までも多くなり、息子から
「もう漢字は記号の塊にしか見えない。毎日使わないのになぜ覚えるの?!」
と言われました。わたしは内心、そうね、使わないよね。息子が楽しくなさそうな様子は分かっていたのですが、ぱっと止めることができませんでした。漢字は書いていないと忘れてしまうからと、漢字ドリルやこくごの教科書の音読などルーティンワークの姿勢をすぐには崩せずにいたのです。

 

 

日本語学習ストップ期間


 でも、これまでのように漢字を楽しく生活と結びつけて学んだりという楽しさをアウトプットできないのは事実でした。息子が4年生頃から、私は泣く泣く一旦日本語学習すべてを止める決心をしました。それから一年以上何もしませんでした。残念な気持ちは拭えなかったですが、息子が日本語をそれ以上に嫌いになって欲しくない気持ちの方が優っていました。

 

突然の移動と引越し


 その後、タイ南部から中部へ引っ越しました。夫の仕事上異動命令はいつも突然。当時引っ越し通達は3日前。思春期に入った息子にとって、慣れ親しんだ大好きな学校、友達との突然の別れ、そして小学校5年後期からの知らない地での新しい学校への編入、そこでの友達作り、自分の居場所探しは大変そうに見えました。ダブルで二言語できることは、決してプラスではないと言い、僕は目立ちたくない、なるべくならダブルであることを隠したいと言いました。そんな時期でもあったので、私からまた漢字の勉強を再開しようか、などと口に出すことはできませんでした。

 

漫画という転機


 しばらくして引っ越しが落ち着きました。その頃日本へ本帰国されるという日本人の方より大量の漫画を譲っていただきました。ちょっと古いものですが、サザエさん、ブラックジャック、おーい竜馬、しんちゃん コナンなど何巻もある続き物。実は子どもたちにとって、そして、私にとってもこれが大きな転機となりました。それまで漫画はドラえもんと化学漫画以外、家に置かずにいました。家庭内に携帯やIpad導入を避けていた理由の一つとの重なるのですが、一旦漫画など中毒性の高い娯楽に向かってしまったら、勉強姿勢が崩れ本離れに繋がると思っていたからです。でも今回、子どもたちは長い間日本語に触れていなかったし、日本語との楽しい時間になるかもと思い、我が家で漫画を解禁にしてみました。

 

パート6へつづく…

 

まき先生の過去のエピソード

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② わたしの行った家庭内での文字指導」~漢字学習への拘り~

③ 新しい環境に慣れるまで

④家で行っていた4つの文字指導