わたしと子どもたちで広げる日本と日本語の世界(後編) 9-2
娘は小学校4,5年生の頃、首都バンコクにある、「バイリンガルの子どものための日本語教室」(以下、バンコクバイリンガル教室)へ通っていました。保護者(子どもたちの父母、祖父母)が先生役となって、子どもの日本語のレベルに関わらず、日本語を通じたコミュニケーションを楽しめる活動を作りながら運営している教室です。
でも、タイに暮らす同じ年代の子たちが参加していること、ここの教室では自分らしく振舞えるかも、と感じ取り参加を決めました。
テーマ型にデザインされた活動が中心で、同じ年代の子どもたちと時にタイ語、時に日本語や英語、中国語などでコミュニケーションを取りながら、活動を楽しみました。
バンコクバイリンガル教室に通う娘は、多くの言葉の中で生きている自分を自覚でき、自分らしく自然に振舞える場所を見つけとても居心地がよさそうでした。
一方、わたし自身は親、先生役としても小学低学年の教室に携わりながら、同じような境遇の家族との関わりによって我が子だけに集中しがちだった自分の気持ちのバランスが拡散され、子育ての様々な不安が解消されていきました。
親同士、活動が終わってからランチを食べながら、お茶をしながら話をする、そんな時間もすごく楽しく、安心できる時間でした。
そして活動を通し、家庭内で娘と新しい対話が常に生まれていたのは言うまでもありません。
百人一首で広げたテーマ活動
娘が5年生になったとき、テーマ型活動通年プロジェクトで一冊の本を作成することになりました。
タイトルは自由、娘は迷わず百人一首を選びました。本の構成は、百首の中から好きな十首選び、得意な絵と歌の意味を添えるというものにしました。
作成中は、大好きなものを紹介する本を作れる喜びで一杯。書き間違いなど臆せず長い説明文もどんどん書いていました。
そして、年下のクラスの子どもたちでも興味が持てるようにと十首の横にそれぞれ塗り絵できるよう挿絵を添えました。
京都で撮った石に刻まれた歌碑の写真も載せ丁寧に作り上げました。
この本を手掛けた年は教室の皆に自分の好きな百人一首の世界を知って欲しい、百人一首の話を先生に聞いてほしい、伝えたいという思いがとても強く、
小学生用の百人一首大図鑑を読んでは新しい発見をし、教室でのおしゃべりを楽しんでいました。
バンコクバイリンガル教室は、娘が自発的に好きな日本語に向かい合える貴重な時間であり、
それまで知識として蓄積されていた日本語が自然と生かされ、娘の持つ日本語の価値が見い出されていった場でした。
保護者(子どもたちの父母、祖父母)が先生役となって、子どもの日本語のレベルに関わらず、日本語を通じたコミュニケーションを楽しめる活動を作りながら運営している教室です。